HD189733bの瞳

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「え~、このクラスに在籍していた、青木八代さんですが、家庭の都合で転校するたこととなりました。突然のことで、皆さんに挨拶ができないことを悲しく思っていました」  朝のホームルームで担任が、ありきたりなテンプレートな言葉を並べる。原理は不明だが、突然いなくなっても不審に思われぬよう後処理はしたのだろう。  クラスメイトがざわめきだし、何人かはこちらに不躾な視線を投げ掛ける人もいた。が、話しかけてはこないようだ。  そんな文字通りの雑音をBGMに視線を窓の先、空に向ける。昼間なので、当然、星は見えない。あれから空を見上げることが多くなった。  空の遥か向こうにある、HD189733bと、その惑星の色に似た、彼女の青い瞳に憧憬を向けて。
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