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その日はなぜか、屋上に呼ばれた。多分またふざけたことだろう。UFOでも呼ぶ気か。
屋上に付くと、そいつはなぜか、もの悲しげに空を見上げていた。
「で、今日はなにするんだ?」
「いえ、UFOでも呼ぼうと思いまして」
予想通り。だけど、妙に心がざわつく。目の前の電波少女からは、いつものような飄々とした雰囲気は消え失せ、重苦しい真実味しか感じられなかった。
「すみません。さようなら」
「……は? いやなに急に」
唐突なその言葉は、嘘や冗談のようには聞こえなくて、いつもの八代の表情からはかけ離れていて戸惑いを覚える。
「もう、会えません」
「いや、たちの悪い冗談はやめろよ」
おかしい。こんな冗談を言う奴ではない。本気で言っているように思えて、焦燥感に駆られる。
「私が宇宙人なのは言ってますよね」
「だから、冗談はやめろって!」
「実は母星から帰還せよとの命令がありまして、地球を去らなければいけなくなりました。もう……会えないと思います」
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