HD189733bの瞳

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 そして、突如眩い光が俺たち二人を、屋上を包み込んだ。目を細め、光の源を見ると、学校が丸々入ってしまうような大きさの巨大なUFOが出現していた。大多数が想像するような、いわゆるアダムスキー型で、堂々と空中に存在している。こんなものが現れたら、騒然となるはずだが、騒ぎになっている様子はない。俺たちにしか見えないのだろうか。 「すみません、お迎えが来てしまったようです。さようなら」  そう言った八代の表情はUFOによる逆光で見えなかった。理解の及ばないことが次々と起きて、混乱していたが、それでも体は勝手に動いて八代の手を握っていた。 「行くなよ。ずっと理解不明なことばかりだけど、それでも……行かないでくれ」  懇願するように、縋るように言った。ただひとつ、この手を離したら、もう会えないことだけ分かっていた。 「今まで、色々迷惑かけてすみませんでした。覚えていますか? 入学式で最初に私に話かけてくれたこと。地球に来たばかりだった私は、最初に話かけてきたあなたを地球人の基準として、調査しようと打算で近づきました。だけど、あなたは優しくて、文句を言いつつも色々と教えてくれました。一緒に遊びに行って、旅行に行って……いつしかその関係性を楽しんでいました」 「迷惑をかけてとか、すみませんとか言うなよ! そんな別れ際の挨拶の定型文みたいな、卒業式に大多数の人間がスピーチで言うようなこと言わないでくれ。頼むから……行くかないでくれ。俺もお前といるのが」     
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