藍よりもあおい青

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 *** 「凄い……綺麗」  眼前に広がるその光景に、私は思わず息を呑む。  周りを木々に囲まれた池。  仄かに白を帯びた青い水面には、山や空などがくっきりと、それはまるで鏡のように映り込んでいる。  持参したタブレットを鞄から取り出す。  フォルダ内の保存データから、私は一枚の画像ファイルをタップした。  画面に現れたのは、一枚の絵画。  不思議で神秘的な空気を纏った、どことなくファンタジックな風景画だ。 「やっぱりそうだ、ここで間違いない。南山槐(みなみやまかい)先生、最後の作品の聖地……」  南山槐氏は、現代日本画を代表する大家(たいか)。  美大で日本画を専攻する私の憧れでもある。  主に青を基調とした、印象的で清涼な色彩の風景画を得意とし、その作品はたちまち観る者全ての心を魅了する。
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