青い瞳と金の月

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右、左、左、右、不規則に繰り出される鋭利な爪を鎌で受け流す。雲の切れ間から月が顔を覗かせた時、きらりと光るものがあった。それはペイジの髪に止まった髪飾り。緑の石があしらわれたものだ。 「それ、お母様とお揃いなんじゃない?」 近づいた瞬間、触れようと手を伸ばすと感づいたペイジが後ろに跳んで距離を取った。威嚇するように唸り声を上げる。 「ふふっ。何で知ってると思う?」 自分の顔にゆっくり笑みが浮かぶのが分かる。ああ、ずっとずっと言いたかった。ペイジ。あなたに初めて会った時、すぐに分かったの。なんて運命的。私胸がときめいたわ。久しぶりに。 「私が殺したの。この鎌でね。この町を探している時、ちょうど遭遇したの。きっと新しい狩り場を探していたのね。一匹だったわ」 乱れた長い赤毛と金の瞳。そして、髪には緑の髪止め。 「あなたがしているのと同じ。私が最初に殺した半グールはあなたの母親よ」 ペイジは再び襲いかかる。 右に転がり避けると、身を翻して走り出した。ペイジは悔しそうに叫ぶと追いかけてくる。 「あは、はは、あはははははっ」 これは私の笑い声。 楽しい。楽しい楽しい楽しい。 木を避けながら前へ前へと走る。全力で。鎌を投げ捨ててしまいたかったが、その衝動はぐっと抑えた。大事な仕事道具だもの。さすがに素手で戦えるほどの身体能力は持ち合わせていない。だから出来うる限りの全力で。 そして、光の先に森を抜けた。 そこは一面の花畑だった。満月に照らされた花の園。夜でもかぐわしい香りが空気に満ちていた。 後ろを振り返る。 牙を剥いた顔からは昼間の人懐っこさは感じられない。 「私、同年代の友達っていないの。だからこうやってあなたと遊べるのがほんとに楽しいわ。夜も、昼もね」 両手を広げてペイジを迎える。右手には鎌を持ちながら。 「最後の一匹になるまで、あなたのことは殺さない。だから、それまで、楽しく楽しく遊びましょ」
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