青い瞳と金の月

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青い瞳の乙女は満月の夜に拐われる。 それは町に伝わる言い伝え。しかしこの町に住む人々はほとんどが金の瞳。だから言い伝えは言い伝えでしかなく、実際の被害者を見た者はいなかった。 私が現れるまでは。 「今日からお世話になります。エウレカと申します」 顔を上げた私を見て、一体どれだけの人が驚愕の表情を浮かべたことだろう。交流の盛んな街では青い瞳なんてつゆほども珍しくはないのに。この町の人たちと言えば、みな、凝視する。満月に拐われる、噂の乙女を。母親譲りのこの青い瞳を。 「だってね、仕方がないのよ」 ペイジは癖っ毛の赤毛を揺らしながら言う。 「この町には青い瞳の子がいたことがないんだもの。みんな金色。だからエウレカにびっくりしちゃうの」 金の瞳をくりくりさせて無邪気そうに私を見る。 「この町のこと、嫌いになった?」 「そんなことはないけれど。ちょっと疲れちゃって。こんなに注目されることってないから」 「うそ。エウレカすっごく綺麗だからいつでも注目の的でしょ」 「そんなことないったら」 引っ越してきて三日目。今日はペイジに町を案内してもらっている。周りを見渡せば必ず誰かと目が合い軽く会釈する。
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