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「案内って言っても、そんなに対したものはないんだけどね。へへっ。あれがパン屋さん、あっちは小道具屋さん、その向こうはお医者さんのブロイラーさんの家」
どこにでもあるようなのどかな町。ただひとつ特徴的なところがあるとすれば。
「花が多いのね」
どの通りにも、どの家の窓にも、必ず花壇や花瓶が置いてある。だからどこにいても必ず微かに花の匂いがする。
「そうなの!みんな花が好きでね、いろんな花を育ててるんだ!」
~中略~
町に来て最初の満月。
「一応、部屋に鍵かけて寝てね。何かあったら必ず呼んでね」
「ええ、ありがとう」
翌朝、リビングに降りるとペイジが跳ねるように抱きついてきた。
「よかった、何もなかったんだね!」
しかし次の日、肉屋の主人が消えた。
次の次の日、小道具屋の妻が消えた。
一週間後には農業を営むワット家がみな消えた。
「……なんか、最近変。みんなどんどんいなくなっちゃう。エウレカ、私怖いわ」
~中略~
愛用の鎌を組み立て、エウレカは目の前のグールたちに向ける。
「何百年の経験の果て、昼は人間性を獲得した半グールたち。でもどんなに花の香りで誤魔化したところで、あなたたちにこびりついた血の匂いは消えないのよ」
満月の夜に拐われるのではない。グールの瞳はみな金色。その金色の瞳が輝く夜はいつでも活動出来るのだ。
青い瞳と言うのは、闘牛が赤に反応するようにグールが青に特に反応するというだけのこと。
~中略~
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