あちらの家の父さん

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 僕なんかはすぐ近くで暮らしてるわけだから、うそだと思う。 「でもね、友達が何人も見てるの。青いお洋服のかわいい女の子が、あの家に入れられていくの」 「二つ、説があるの」 「一つ目が、すごい変態だっていう説」 「でも、もう一つの方が怪しい」 「怪しい」 「家族を探してるっていう説」 「あそこのお父さんね、何年も前に、自分の家族を亡くしちゃってるの」 「それもひどい事件で」 「だから前の家は捨てちゃって」 「この町に引っ越してきた」 「自分のかつての娘と同じ格好をさせて」 「あの家で飼ってるのよ」 「でね、夏休みが終わったら殺しちゃうの」 「成長しちゃって、自分の娘と、違ってきちゃうからって話」 「バラバラにして、トイレットに流す」 「青い洋服だけは取っておくの」 「きれいきれいに洗って、次の女の子に着せるためにね」  昼間は各地の小学校を回って、良さそうな次の女の子を、物色しているという噂だった。  真実かどうかはともかく、みんなの中でも、お父さんということになってる。  もしもあの人がただの学生さんであるなら、どうしてこういう話になるのだろう。  あそこのお父さんは、階段を一段ずつ、ゆっくりと下りていく。 「ちょっとマラソンしてくる」  現実に人はいるんだから、追ってみるのが早い。 「せっかくお父さん帰ってきたのに、晩御飯も残して?」 「お腹いっぱいだもん。だからマラソンしてくる」  外に出たら、あそこのお父さんは坂を上っていくところだった。突き当りの角を曲がる。  僕らの学校の方へと続いていく道だ。
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