0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
僕なんかはすぐ近くで暮らしてるわけだから、うそだと思う。
「でもね、友達が何人も見てるの。青いお洋服のかわいい女の子が、あの家に入れられていくの」
「二つ、説があるの」
「一つ目が、すごい変態だっていう説」
「でも、もう一つの方が怪しい」
「怪しい」
「家族を探してるっていう説」
「あそこのお父さんね、何年も前に、自分の家族を亡くしちゃってるの」
「それもひどい事件で」
「だから前の家は捨てちゃって」
「この町に引っ越してきた」
「自分のかつての娘と同じ格好をさせて」
「あの家で飼ってるのよ」
「でね、夏休みが終わったら殺しちゃうの」
「成長しちゃって、自分の娘と、違ってきちゃうからって話」
「バラバラにして、トイレットに流す」
「青い洋服だけは取っておくの」
「きれいきれいに洗って、次の女の子に着せるためにね」
昼間は各地の小学校を回って、良さそうな次の女の子を、物色しているという噂だった。
真実かどうかはともかく、みんなの中でも、お父さんということになってる。
もしもあの人がただの学生さんであるなら、どうしてこういう話になるのだろう。
あそこのお父さんは、階段を一段ずつ、ゆっくりと下りていく。
「ちょっとマラソンしてくる」
現実に人はいるんだから、追ってみるのが早い。
「せっかくお父さん帰ってきたのに、晩御飯も残して?」
「お腹いっぱいだもん。だからマラソンしてくる」
外に出たら、あそこのお父さんは坂を上っていくところだった。突き当りの角を曲がる。
僕らの学校の方へと続いていく道だ。
最初のコメントを投稿しよう!