盗まれた青

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盗まれた青

「はぁ…。」 茜色に染まった空に手を伸ばし、女性警官波鳥ミズキは物憂げな表情を浮かべていた。 彼女の隣には昼食のお弁当。 時間はただいま13時を迎えたところだ。けっして夕方ではない。 「あ、近藤先輩また屋上で休憩とってる。」 新米巡査葛城タツローが冴えない顔をドアから覗いてくる。 「緊急時に呼べないと困るから休憩は自分の机でって、紀伊警部にこの前怒られたじゃないですか。戻りましょう。」 「うるさいわね…。あのむさくるしい部屋じゃなくて空を眺めながら食べたいのよ。」 「こんな空をですか。」 「こんな空でもよ。できれば青空が良かったけどね。これじゃまるで昼休憩逃して夕方に弁当食べてる気分だわ。」 真っ赤な空はそんなミズキの気持ちなど気にしないようで、これから夜になるまで変わる様子はない。 3か月前、世界から青色が盗まれた。 色泥棒という前代未聞の悪事を働いた男の名は怪盗インビジブル。世界中に犯行声明のカードをまき散らし、ファンクラブができるほどの人気まで獲得した。 しかしカードが撒かれたルートの調査と熱心なファンの追っかけにより犯行から数日でアジト特定。逮捕。     
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