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「これは、あなたのエゴに他ならないのではないですか。。」
「分かっていますよ。娘はこんなこと望んじゃいない。ホントはただの復讐なんです。」
「復讐?」
「世界で最もかわいい私の娘を奪った世界への復讐。娘の好きだったものを全世界から奪って娘と一緒に送り出して、どうだざまあ見ろって。こんなこと、意味ないことだって分かってるのに。」
森山の目に、赤色のしずくが浮かぶ。そこにいたのは、世紀の大泥棒でも、冴えない中年男性でもない。ただ一人の、わがままな父親だった。
「最後に一つ、聞いていいですか。」
波鳥は、最大の疑問をぶつける。
「どうして、青色だったんですか。」
「どうしてって、さっき言った通りですよ。娘は青空が好きだったから。」
「その空は、青色でなければいけなかったのでしょうか?赤い空に慣れてしまった私には、青でなければいけない理由がわからなくなったんです。」
「空が青でなければいけない理由?そんなの私にもわかりません。ただ、娘はこういっていました。」
森山は遠い目をしてポツリとつぶやく。
「命に囲まれているって、感じがするんだって。」
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