盗まれた青

3/15
前へ
/15ページ
次へ
「あんなにきれいだった海も、今じゃエヴァの世界みたいですもんね。」 世界から青が消えて本当に何もかもが変わってしまった クールを演出していたあのアイドルのコーデも、今じゃ一変して熱血系。 WordがPowerPointに変わり文書を作るのにも一苦労。 ハワイアンブルーのかき氷は全部イチゴ味になったし、スーパーの牛乳は全部メグミルク。 「ねえ葛城。なんで空は青かったんだろうね。」 「空が青い理由ですか?確かプリズム反射が関係しているとかなんとか」 「違う違う。空が青かった理屈を聞いているんじゃないのよ。そんなものはもう意味がないでしょ。」 「じゃあ何を聞いてるんですか。」 「空が青くなきゃいけなかった理由よ。」 「はい?よく意味が分からないです。」 「だからさ、世界から青色が消えて3か月、もう人々はあの真っ赤な空を受け入れ始めてるわ。警察には期待できないってね。だから私もちょっと考えてしまうの。青でなければいけない理由ってなんだろうって。」 「先輩…、まさかもう青を探すのは諦めようなんて思ってないですよね」 「まさか。仕事だもの、きちんとこなすわ。」 その時、屋上の扉が開いた。現れたのはまた別の新米警官。 「波鳥さん、こんなところにいた!上の方々から緊急の呼び出しです!」 あらら。 「ホラ先輩、言わんこっちゃない。」     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加