期待に膨らむ

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 明日は朝が早いからとそこでやめた。「もっとほしいのじゃ」とせがまれたが、心を鬼にして、水分補給のためのペットボトルのミネラルウォーターを取りに行った。  戻ってくると静かで、もしかしたら先に寝てしまったかもしれないと静かにドアを開ける。そこで俺は、衝撃的な光景に息をのんだ。 「はぁ、これで100回は注がれたのう。そろそろ、可愛いややこができればよいのう……」  起きていた。香さんは脱ぎ散らかしていた俺のシャツを羽織って、愛しそうに下腹部を撫でて微笑んでいる。  少し前までは見ることもなかった、慈しむような幸せな微笑み。まさか、俺との子供を諦めていなかったのか。  あの時は俺も香さんに酔ってどうかしていたんだ。目が覚めて、思わず口走ってしまったことや乱暴にしてしまったことを酷く後悔した。  何度も謝って、香さんはプリプリ怒りながらも「体が壊れるほど激しいのは嫌じゃ」とは言わず。ただ「痛かった」とだけ言って拒否はしない。  香さんは本気で子供ができると信じているから。俺の子種を何度も腹の奥で受け止めればいつかは、と信じている。100回って、数えていたのか。  いや、それよりも。俺は開けかけたドアを静かに閉めてケータイを取り出して、ある男に電話をかけた。  廊下で、この時間ならバッチリ起きて活動中のはずの彼が出るのを待つ。10回のコール。まだだ、待つ。15回、20回、22回目でやっと出た。何をしていた?
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