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「急ぎの頼みがあります。オスの擬人化種でも子供を授かる薬を作ってくれませんか?いや、作れ。今すぐによこせ、早く」
『………………はぁ?』
「聞こえなかったんスか?耳が遠いですね。香さんが俺との子供を孕むように薬を作れって言ったんスよ。大変急いでいるので、今すぐ取り掛からないとシバきにうかがうッスよ?」
『シバくのはウエルカム!ムチでも鎖でもロウソクでも……あぁ嘘嘘嘘嘘、かも。電話でも殺意感じちゃうからやめなさい、たぶん。はぁ。本気なのはわかったけどさぁ、さすがに吾輩でも無理だから。たぶん』
電話の相手はドクトル。クソビッチで鬼畜ドエスのドクトルでも、医療のことについては天才。こいつなら作れると、少し本気で思った。
俺もどうかしている。頭では不可能だとわかっているのに。香さんのあの優しく温かな表情を見てしまっては、正気でいられるはずがない。
だから真剣な声で、淡々と言ってやった。生物学的に有り得ないのは重々承知の上。けれど、1度は縋ってみたいだろう?
ドン引きして真面目になっているドクトルの声に、正気に戻った俺はしれっと「冗談だ」と続けようと口を開く。すると手の中からスルリとケータイが抜けてハッと顔を上げた。
「わしからの頼みじゃ。礼は弾むぞ?では、不眠不休で開発するがよい。じゃあの」
ピッ。俺の手からケータイを奪って、勝手に通話を切ってしまったのは香さん。いつの間にドアを開けたのか。上に俺のシャツを羽織っただけの姿で俺を見上げると部屋の中に連れ込む。
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