期待に膨らむ

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 ビクンッ!と体を震わせて香さんが喜ぶ。歯列をなぞるように舐め、角度を変えて香さんの舌を絡め取ると口の外まで噛んで引っ張る。  深く舌を絡めてくるので応じて、唾液を流し込みながら尻尾全体を撫でた。必死に、甘い声を上げながらビクビク跳ねる体は熱くなってきた。  そこで、口を離す。細い糸を引き延ばしながら離れ、1歩また1歩と後退。「え?」と不安そうな香さんの緑色の瞳が揺れる。  呆然と立ち尽くす香さんの手にミネラルウォーターのペットボトルを持たせて、俺はドアの前へ。 「だめです。俺の唾液で我慢なさってください。俺は部屋で明日の準備をしてから寝るッス。では、おやすみなさい」  パタンッ。  俺に触れようと手を伸ばす香さんを放って、俺は自分の部屋へ。あの騒動でボロボロに破壊されていた俺の部屋は5日で修復。痛い出費だったな。  真新しくなった壁を眺め、机に向かってパソコンを起動。えぇと、明日の予定は……  スケジュールを確認しながら、書類のデータを見直す。ヤる気満々の香さんを放置して、この後どうするのかを見たいと思ったんだ。  とりあえず確定しているのは。ドアを破壊してでも俺に触れに来るってことか。これ以上の出費はさけたいので、できるだけ穏便に、普通に開けてほしいところ。  実は明日の準備なんか今しなくても、すでに準備は万端。さっきのは口実でしかない。  椅子の背もたれにもたれかかって、天井を見上げる。もう来る頃か。さて、怒って来るのかグズグズに泣いて来るのか。  コンコンッ。
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