期待に膨らむ

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 わしを睨みつけておる赤い瞳はギラつく、イヌワシのもの。捕食者の眼。まさか、緋桜がこのわしを喰らうのか?あの男のようにわしを餌として、喰らおうというのか?  ツウ、と目尻から熱いものが流れ落ちた。恐怖に震える。胸のモヤモヤが濃く広がっていく。 「っ!?も、申し訳ありまません!お、俺は、なんてことを……」  怯えるわしの顔が緋桜の赤い瞳に映ったその時、我に返ってバッ!と手を離した。激しく咳き込むわしをきつく抱きしめ、何度も謝る。  無意識だったとはいえ己の所業に酷く恐怖している。体全体がガタガタと震え、わしは咳が落ち着くとそっと頭に手をやった。  ビクッ!と震える。そのまま優しく何度も撫でながら「大丈夫じゃ。わしも、いきなりすまなんだ」と言ってやると震えが治まった。  わしらは擬人化種。動物としての特徴や性格が人間の姿の時でも影響する。ゆえに背後からのちょっかいで過剰に反応してしまうのは動物としての性。  もう慣れている。普段の緋桜なら肩を震わす、わしにジト目を向けながら文句を言うだけじゃっただろうが。なにぶん今回は機嫌が悪い。 「おぬしが最近おかしいのはわかっておる。わしのせいなのか?もしそうだとしたら、すまぬ。わしには心当たりがない。何か悩みでもあるのか?わしに打ち明けられぬことなら、無理には聞かぬ。緋桜を信じておるから、待っておる」  ビクッ!と、また緋桜の体が跳ねた。黙り込んで、やがて「すみません」と顔を上げた緋桜は目を合わせてくれなかった。
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