招かれてみたらそこは動物園

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 どうやらこのいなり寿司は香さん専用らしい。香さんがシオン君に初めて会った時、猫屋敷さんが昼食にいなり寿司を振る舞ってくれたんだとか。  そこで香さんが無類のいなり寿司好きだと知って、今回はシオン君が作ってくれたんだと。  手間がかかるのに、たぶん100個以上はあるいなり寿司を作ってくれたとか。甲斐甲斐しい。これはもう、猫屋敷さんの立派な嫁。  しかし大丈夫か?香さんはスーパーにあるような安いいなり寿司は絶対に食わない。稲森という老舗の寿司屋――かなり高額――のいなり寿司がお気に入りなのだが。 「そうね、ユキちゃんがせっかく用意してくれたんだから食べましょう。ネコヤンさん、海苔取ってくださーい」 「手巻き寿司ッスか。自分で作るのは初めてです」 「わしのためにわざわざ作ってくれたのか。何でも作れるのじゃなぁ。うむ……う、む…………シオン君、店が出せるほどじゃぞ。美味い美味い、これはまた食べ過ぎてしまう……」  杞憂だったようだ。もう5つ目を食べている香さんの明るい緑色の瞳は輝いていて、さらに両手に1個ずつ持っているし。だから、行儀が悪いですよ。  俺も1ついただこう。まず、形が綺麗だ。米の炊き具合もちょうどよく、酢の加減がきつすぎなくていい。  具はゴマだけだが、ゴマの香りが引き立つように揚げの味も濃くないように調節されている。しかも香さん好みの甘めの揚げ。これは本当に、売れる。 「とても美味しいッスよ。これは才能です。将来は何を?なら、得意なことを活かせるチャンスッス。この街での企業なら香さんに紹介してもらえば……」
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