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「緋桜、お前は寿司より肉だろう?これ、1番デカい唐揚げだから食えば?口開けて、ほら」
ジリジリ焼けてしまいそうなほどの熱い視線をシオン君から感じていると、そう言って猫屋敷さんが大きな唐揚げを突き出してきた。
怪しさ満点の大きな唐揚げに箸を突き刺して差し出すとは、子供に見せられないような行儀の悪さ。
明らかに、誰がどう考えてもこれは猫屋敷さんのイタズラ。タイミング的に、中には大量のワサビでも入っているんだろう。
さっきシオン君が俺に勧めてくれたワサビのチューブを、さりげなく取って自分の手巻き寿司に少しかけつつコソコソしていたし。
それに何より。この人が俺のためにと、1番大きな唐揚げを取ってくれるわけがない。
そして猫屋敷さん。あなた、何食わぬ顔もできないんですか?笑いをこらえていても口元は震えているし、顔にハッキリ「これはワサビ入りです」と書いている。
隣でシオン君が呆れているあたり、彼にもバレバレですよ。
「そんな差し出し方は行儀が悪いッスよ。俺はすでに持っているので、それは猫屋敷さんがどうぞ?ほらほら、ライガーらしく一口でガブッといっちゃってくださいよ」
「い、いや俺はいいし。せっかく緋桜のために取ったんだから食えよ、なぁ?」
「おや、なぜそんなに焦っているんスか?まるでこの唐揚げに、大量のワサビを注入しているような。まさか学校で『先生』と呼ばれるあなたが、そんな子供じみたことはしませんよねぇ?」
俺は受け取るフリをして油断させると、猫屋敷さんの手を上から掴んだ。そしてそのまま、グッと怪しい唐揚げを突き返す。
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