ぶれいこう

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「ぐっ、う……あぁもう、いいから、食えよっ!」  サッと青ざめた猫屋敷さん。何が何でも俺に食わそうとテーブルに手をついて押し付けてくるが、俺も負けられない。  俺と猫屋敷さんはテーブルを挟んで向かいの席なので、押したり押し返されたりがテーブルの上で繰り返される。唐揚げが1番、かわいそう。食べ物で遊んではいけませんよ?  ライガーである猫屋敷さんに力でかなうはずがない。だから何度も、上から押さえ込むような怪力に力負けして俺の口ギリギリまで迫る。  が、俺は握力が強い。顔を反らせながらグググッと猫屋敷さんの手を握り込み、ついでに爪を立ててやる。  子供でもしない、芸人がやるようなことをやっているんだ。爪を立てるくらいはいいだろう。俺が正義だ。  猫屋敷さんは箸を握っているんだし、外からと中からとの痛みで顔が引きつった。押してくる力が弱まる。あと少し。  チャンスとばかりに身を乗り出し、さらに力をこめてグンッ!と押し出すと、猫屋敷さんの大絶叫。 「んんんんんんんんんんんんんんんんーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」  口いっぱいに、大量のワサビが入った特大唐揚げを突っ込まれてくぐもった叫びをあげた猫屋敷さんは、それでも両手で口を押えて吐き出さなかった。  当たり前だ。そんなことをすれば俺が家の外に締め出してやる。ここは猫屋敷さんの家だが。  ふぅ、やれやれ。相変わらずというかなんというか。これでもしも俺が負けても、喜ぶのは本庄さんと香さんくらいだろうに。
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