ぶれいこう

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 俺よりもかなり年上のくせに泣きついてきて、仕方なく家まで送ることになった。そりゃあ、5時間もさまよっていると言われれば同情してしまう。  オッサンと2人きりで夜の街を歩くとか。心底嫌だったし、それに俺は体調が悪かった。  香さんに拾われて生活環境が変わったせいと、その日まで4日間が仕事で徹夜だったのと。あと、その4日間の食事が抜きかゼリーだけだったため。  見事に風邪をひいてしまっていた。それなのに夜風に当たるとか悪化するだろう。だが俺は、命の恩人である香さんに風邪をうつしたくなかった。  だからある程度ブラブラしたら家に帰ろうと、そう思っていたのに!  出会った場所から猫屋敷さんの家はかなり距離がある。しかも、熱が出てしまった俺は正しい道を間違えてしまい遠回り。  幸い、ロクに道を覚えられない猫屋敷さんは俺達が何度か同じ道を通っても気づかなかった。  このあたりで大体の想像はつくだろうが、俺の意識がもうろうとしてきた。心の中で「クソッ、猫屋敷さんにうつってしまえ」と悪態を吐いていたな。  しかも突然「便所行きたい」とか言い出して。近くにトイレがある施設もコンビニもないので、夜だし「そこらへんでどうぞッス」と背を向けたが。  猫屋敷さんは「便所以外では絶対にしないって決めているんだ!」となぜか吠えてきて。なら我慢しろと歩き出す。
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