真藤緋桜

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 ――目が覚めると朝だった。いつもなら彼、緋桜が起こしに来てくれるのに。今日は自力で起きた。ということは…… 「今何時じゃっ!?」  ガバッ!と飛び起き時計を凝視。死んだ。もう最初の対談が始まっている時間だ。ケータイの着信履歴が、エグイ。  あーもう、知らぬ知らぬ。電話をかけて、風邪を引いただとか適当に嘘をついて、次の対談には出席すると副市長に伝える。わしの代わりに対談に出させよう。  これでいい。あとは顔を洗って身支度を整えて、あいつに…… 「緋桜!おらんのか、緋桜!……あぁまったく、面倒な……ん?これ、は……」  どこで何をしておるのか、職務放棄した緋桜を叱ろうと呼んでも、返事がない。ベッドから降りて探しに行こうとしたら、何かを踏んだ。  足元に目を向けると、焦げ茶色の羽根が数枚。昨日、車の中で緋桜の足元に落ちていたあの羽根と同じ。  それが、まるで足跡のようにドアの方へと続いておる。緋桜の羽根を握り、わしは部屋を出た。腰?たった1度の行為で痛めるほどヤワではないわ。  自室を出るとすぐ隣の部屋に羽根が続いておる。ノックはせん。どうせカギはかかっておらぬ。  緋桜の部屋の中に足を踏み入れると、暗い。ここにおるはずの緋桜の姿も見えぬ。怒りを露わに歩みを進めると、何かがうごめいた。 「馬鹿者が。このわしを遅刻させおって。きつく仕置きをしてやるゆえ姿を見せ…………緋桜?どうしたのじゃ、その姿は」  ベッドの奥、さらに暗い部屋の隅に、緋桜の頭が見えた。ツカツカと向かって羽根を投げつけてやろうと思うたが、できぬ。
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