真藤緋桜

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 身を隠すように膝を抱えておるようじゃが、その姿は異形。頭こそは人間の頭。しかしそこから下、体全体を覆っているのは、わしが手に握る羽根と同じ色の大きな翼。 「ひお――」 「近寄らないでください。大変申し訳ありませんが、今は動ける状態にありません。あとでどんなお叱りも受けますので、今日はお1人で……」 「わしの気にあてられたか?職場には歩いていく気も、ましてや人間が運転する車に乗っていく気もない。さっさとその汚い翼をしまって車を出せ」  なんだ、生きておるではないか。くぐもってはおるが声もしっかりしておるし、しかしハラリとまた羽根が抜け落ちた。  わしはバイクを持ってはおるが、それは女に変化している時専用。車は緋桜が運転する車しか乗らぬ。緋桜に何が起こっておるのかはわからぬが、わしの知ったことではない。  翼に隠された腕を引き立たせようと手を伸ばす。瞬間、手の甲に鋭い痛みが走った。 「触るなッ!あっ……血、が……」  バサッ!と大きな翼が開かれ、中から飛び出した鋭い爪で引っかかれたのか。わしが、緋桜に?血が?  やっと顔を上げた、赤い目をギラつかせる緋桜はわしの手から血が流れておるのに気づくとサッと青ざめた。 「っ!こ、このわしを傷つけるか、愚か者め!」 「申し訳、ありません。しかし……俺だって、こんな姿……なりたくてなったわけじゃ、ないんスよ……」
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