真藤緋桜

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「原因がわからぬと?わしの部屋からこの羽根が落ちておったが、そうなったのは昨晩か。ふむ…………会議は副市長に任せればよいか。何があったのか話せ」 「え?し、しかし大事な会議を副市長に全て押し付けては――」 「あとでわしがどうにでもする。おぬしはわしの秘書じゃが、擬人化種の1人じゃ。原因もわからずそうなってしもうたのなら、調べて原因を明かすのがわしの務め。そうじゃろう?」  何のための副市長か。使える者はとことん使えばよい。わしは、人間どもの相手をするよりもこいつを優先する。  手を押さえ、罵倒した時。緋桜は悔しそうに顔を背けた。体をつなげて、絶頂に達した時に気持ちが高ぶり翼が出ておったことはまぁあるが。  今回のこれは様子が違う。顔を覗き込めば少々顔色が悪い他は異常がなさそうじゃな。  わしがすんなり仕事を放棄したことに大層驚いておる。心配せずとも、それが治まったらあとでたっぷりと仕置きをしてやる。覚悟しておれ。 「…………痛み入ります。ならまずは、怪我の手当てを……」 「お、おい、何をして、いっ!舐めるやつがあるか、馬鹿者!もっと普通に、消毒でもして絆創膏を貼ればよいじゃろうがっ」 「いや、舐めとけば治ると思って。俺、本当に動けないんス。だから、舐めて治します」  違う違う違う違う違う、絶対に違う!体が動かないという割には片腕をわしの腰に回して抱き寄せておるし、しかも大きな翼で包み込んで。  もう片方の手で引っかかれた手を持って、舐めておるとか。本気でそれで治ると?とんだ馬鹿者じゃ。  しかし、真剣な顔で必死にわしの手を舐める姿を見れば何も言い返せなくなる。結構深く切れておるし、それなりに痛いんじゃがな。
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