猛禽類の野性

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 顔を青くしている彼女は外の街からつい最近この街に引っ越してきた新社会人。  新しい仕事を探して、めぐりめぐって香さんに行きついた。彼女が擬人化種ということもあり、香さんが同胞がいる職場を勧めたんだ。  被服系、それも洋服よりは和服の仕事がいいということで、この街で1番有名な呉服店「タカミヤコーポレーション」に連絡。  社長は擬人化種。香さんが監視をつけるほどの要注意人物。  それでもこの街で生きる人間としての彼は、口と態度は悪いが真っ当。呉服のことに関しては右に出る者はおらず、香さんが持っている着物は彼が作ったもの。  俺は断固拒否した。そもそも、俺には着物なんて似合わないし使うシーンがない。俺にはスーツが1番だ。  過去にも何人か、擬人化種の新社会人を受け入れている。まぁ、精神的に追い詰められて半数は1か月で姿を消したが。  1か月我慢すれば慣れる。それに彼女は女性。風当たりは俺達や、男性よりは優しい。そよ風くらいだな。  気が弱く、すでに半泣きの彼女の肩を押してビルの中へ。数十階建てのビル、このビル全体がタカミヤコーポレーション。ロビーには受付があり、香さんの顔を見ると受付嬢の1人が電話をかける。  アポは取っているし、俺と香さんは顔パスが利く。この街で香さんの顔を知らない擬人化種は、人間もいないだろう。あ、シオン君が会うまで知らなかったらしいな。
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