猛禽類の野性

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「こんにちは、いらっしゃいませ。社長はただいま、3階の展示室におりますのでご案内いたします。こちらへどうぞ」 「いや、案内はいいッス。あぁ君、社長にロビーまで迎えに来いと言ってみてくれ。恐れ多くて無理か?ならそれを貸してください……」  もう1人の受付嬢が立ち上がり、にこやかにエレベーターへと案内しようとして俺が制する。  案内なんかしてもらわなくても、どこに何の部屋があるのかは把握している。そんなに来ることはないが、嫌すぎて覚えた。  さすがは高級呉服店。受付嬢まで綺麗な着物を身にまとっていて、新社会人の彼女が目を輝かせている。  後学のために写真を撮らせてもらったり、香さんにロビーを案内してもらったり。ナイスです香さん。俺はその間に、奴をたきつけるんで。  俺は口元に手を当て小声で電話をかけている受付嬢から受話器を奪い、耳に持って行く。 「おい、俺だ。今すぐ降りてこい、こっちは客だぞ、市長様だぞ」 『あぁ?貴様は市長のフンだろうが、クソ鳥。俺様は忙しい、さっさと来い』  ブツッ、ツーツーツーツー……。あぁ、ちょうどエレベーターが来たみたいですね、乗りましょう。ん?新社会人の彼女が青ざめて震えている?  俺の顔が怖いだと?正直でよろしい。だが、あいつにはそんなことを言うなよ?いくら女性でも、ビルの窓から蹴り落とされるぞ。  なんて言うことなんかできないのでグッと飲み込み。笑みを浮かべて「心配はいりません、ただのからかいッス」とエレベーターの中に押し込む。
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