猛禽類の野性

5/18
48人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
 タカミヤコーポレーションは代々、高宮家の長男が社長を引き継いでいる。今の社長も高宮の純粋な血筋で、同時に高宮家は古くからの擬人化種の家系。  俺と香さんとの付き合いも長いが、あることがきっかけで会うことは仕事以外では一切ない。 「ここッスね。失礼します。入社志願者の女性をお連れしましたよ、高宮社長。手を止めてくださいッス」  3階でエレベーターを降り、壁の案内のとおりに展示室へ。案内を見なくても行ける。あいつの罵声が聞こえるからな。 「今は忙しいと言っただろう!おいっ!貴様、そこにその色を置いたら雅な雰囲気が台無しだ、どけろ!そこのお前、小物は本体とセットにしろ。試着の看板はここに置くなっ!」 「ほほっ、相変わらずの戦場ですね。高宮さん、約束の時間なのでこっちを優先してください。市長の……このわしの命がきけぬと?」  青い着物に身を包んだ青年が、グレーの長髪を振り乱しながら怒号を飛ばしている。目は血走っているし、うっすらクマも見える。  徹夜何日目だ?ロビーに張り出されていた大きなポスターに“タカミヤコーポレーションコレクション開催!”と書かれていたが、慌ただしく殺気立っているのはそのせいか。  ヒョコヒョコと歩み寄る香さん――もちろん俺がそばに控え――が肩を叩き、ニコッと微笑みかけると手を止めた。  香さんを見つめ、俺を見つめ、出入り口でガタガタ震えているかわいそうな新社会人の彼女を見つめ。そしてまた香さんに目を戻した青年。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!