猛禽類の野性

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「………………チッ!休憩だ。各自、水分補給なり仮眠なりとってろ。場所を変える、ついてこい」  カースト1位の香さんにすごまれて観念したか。持っていた、何かの資料らしい紙を床に叩きつけた。けれどすぐに拾って、近くのテーブルに置くと部屋を出る。  背中まである、高く結われたグレーの長髪が俺の顔を叩きそうになって上半身を反らす。わざとか?喧嘩を売っているのか?  買うぞ。売られた喧嘩は買う。ただし、こいつ相手には………………負ける。  エレベーターに乗って最上階へ。ドアの横に応接室と書かれた部屋に入るとソファーを指さし、自分はデスクの上にあるファイルを手に取った。  ポニーテールが揺れる。さながら馬の尻尾だな、あいつは馬じゃないが。自分の髪によほどの自信があって切らないらしい。いつも着物姿なので、袴を穿いて刀を差せばサムライの再来。  身長は俺と同じくらい高く、俺よりは細身。食べても太らないのだとか。洋服よりも着物の方が似合う体格と、顔。  顔は小さく、切れ長の目はいつも怒っているように機嫌が悪い。だが、美人。肌が白く、唇は薄いし鼻は高く通っていて眉はキリッとしている。  女性にモテモテ。ほとんど怒っていて口が悪くても、彼の本性を知らないバカな女達からよく告白されているんだとか。毎回断っているらしいがな。  もったいない。正宗も早く、死ぬまでそばにいたいと思える相手を見つければいいのに。
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