猛禽類の野性

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「そりゃあそのデカチチじゃあ無理だろうな。フン、誰かのためなど……。とはいえ、ウチの考えには合っている……」  正宗は彼女の、胸に目を向ける。海を連想させる深い青の瞳には、谷間が丸見えの、自己主張が過ぎる巨乳。  ホルスタインの擬人化種のせいもあって、デカい。彼女にとっては悩ましいコンプレックス。スーツですらなかなか、着られるサイズがないんだとか。 「古くからの友達が初めて着物を着て、私、感動したんです。メイクもしてない、ただ着物を試着しただけなのにまるで別人。背筋が伸びて大人っぽくて、格好よくて。でもちゃんと可愛さもあって、本人も気が引き締まるって言ってました。浴衣とはまた違う、着物という衣服の良さを知ってほしいんです。なんて、着たことがない私が言ってもですけど……」  熱い、熱意を持っている。気が弱く頼りないが、着物を着たことがない分、着物に対する想いは強い。彼女の目を見ればそれがよくわかる。  彼女は正宗の海のような青く鋭い目を、臆することなくまっすぐ見つめているから。  彼女の履歴書に何かメモを書いていた正宗はペンを止め、彼女を見つめる。口を閉ざし、数度の瞬きの間沈黙してただ見つめる。  その結果、正宗は「2階の衣裳部屋で採寸されて来い。係には連絡しておく」と立ち上がった。 「え?採寸?わ、私のですかぁ?」 「他に誰を採寸すると?今から貴様に似合う着物を仕立ててやる。それまでは裏方で、先輩方のフォローでもしていろ。スタッフは今、全員5徹目に入ってんだからな」
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