猛禽類の野性

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「ごっ、5徹っ!?……うえぇ!?ということは私、ささささっ採用ってことですかぁ!?今から――」 「あぁもううるさい、さっさと行け!……俺様だ。今から小娘が行くから採寸して、俺のデスクに置いておけ。そうだな……去年入荷した205番、深緑の生地と桃色の帯も用意しておけ」  ガタンッ!と立ち上がり慌てふためく彼女の肩を押して、応接室から追い出した正宗。バタンッとドアを閉めると、電話をかけてすぐに切る。  そうか、採用か。だと思った。お前ならあの巨乳でも苦しくない、彼女に似合った着物を作れるはずだ。  ソランが薬学の天才なら、正宗は着物の天才。どんな人にでも必ず似合った着物を作ることができる。そして、決して「無理」だとは言わないし諦めない。  プライドが高い正宗。廊下で泣きそうな声を上げる彼女に「早く行かないとクビにするぞ!」と恐喝、足音が去っていくと溜め息を吐いてソファーに深く腰掛けた。 「このクソ忙しい、戦争中の俺様に着物を作らせるんじゃねぇよ。とでも言いたそうな目じゃな?」 「わかってるならやめろ。新人を入れるならせめて着物を持っている人間にしてくれ。あ?俺様だ、どうした?…………さっき気持ち悪いって言っていたからな、トイレにこもってんだろ。動けそうになかったら回復するまで休ませろ。貴様も、何か食っておけ」  妖孤の眼を使わなくてもわかる、正宗の心情。ソファーに座ってペットボトルのお茶に口をつけた途端にケータイが鳴って、言葉を交わす。
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