猛禽類の野性

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 ここにいてはいけない。正宗の姿が見えない、声が届かないどこか遠くへ逃げなければ。  気が付けば俺は香さんを抱きかかえ、窓から飛び出していた。イヌワシの翼をはばたかせ、猛スピードで大空を突き進む。  昼間だ。人間に気付かれるかもしれない。そんなの知るか。見られたところで、大きな何かが飛んで行ったくらいにしかわからないだろう。それくらい速いからな。  やるべきことはやった。まさかその後にこんなことになるなんて。  人間らしく、忙しく仕事に取り組んでいた正宗が、もうそろそろ更生してプライベートでも普通に接することができると思っていたのに。早急だった。  正宗はまだ香さんを諦めてはいなかった。香さんを恐怖のどん底に突き落とし、我がものに。そして、全てを喰らおうとしている。  何年か前、正宗は香さんを襲った。鉤状の爪で香さんの首を引っかけ、あっという間に腕の中に収める。そして香さんの細い右腕に、喰らいついた。  肉を噛みちぎり、咀嚼し、飲み込む。香さんを喰らったのは正宗が初めてだろう。1000年を生きた擬人化種の始祖を喰らい、正宗はあふれんばかりの力を手にした。  体の中から湧き上がる力と、ヤバいクスリでもヤっているんじゃないかと思うくらいの高揚感。  もっとだ、もっと欲しい。と再度香さんに襲いかかろうとした正宗に俺は立ちはだかったさ。けどな、力の差は歴然。
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