ニャーとワン

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 香さんがビクッと青ざめ、ユキちゃんもといシオン君がニヤニヤ笑っている、ような気がした。  猫カフェなんて初めて来たが、息抜きにはいいかもな。まぁ、堅苦しいスーツ姿の男が2人で来るような場所じゃないが。  毛がつくし、匂いはさほどなくても、何よりスーツというのが悪目立ちか。香さんは何も気にすることなくユキちゃんを抱き上げて頬擦りしているが。  ユキちゃんもといシオン君がげんなりしているような気がする。もうすぐ閉店だが、閉店後に話ができるだろうか? 「ほんじょ……店長さん。閉店後、ユキちゃんはアフターできますか?」 「うちはペットショップでもホストクラブでもありませんよー。ニッコリ」  般若の笑顔に、深みと凄みが増した。その笑顔には「ふざけたことを抜かしてっとタマ取るぞ」と書いてある。ただの脅しではなく、本庄さんならマジでやるな。  閉店前だからか他の客も少なく、スーツ姿の男2人組。しかも市長とその秘書なので入店時にはかなり驚かれた。  オンモードの香さんが「プライベートですので、どうかお気になさらず」と優しく微笑んで。しかし急に他の客達が店を出て行ったあたり、何かしらの力を使ったな。  出て行ったのは目が合った女性達。1人だけ、グレーのロシアンブルーに夢中になっている客だけは目が合わせられなくてキャットタワーの下にいる。  もしかしたらずっと俺達に気付いていないんじゃないかっていうくらい、夢中。
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