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何か俺に伝えようとしたんだろうが、煽ったあなたが悪い。俺は悪くない。
だ、だから、そんなにジトッと睨まないでください。熱く荒い呼吸を繰り返しながら、ヌラリとゆっくり振り向かないでください。怖いッス。
「はぁっ、はぁっ、はぁ、はぁ……やめよと、あれほど言うたのに。欲に呑まれて悪い子じゃ。こっちに来て、はぁ、はぁ……おるのが猛スピードで、しかも――」
ドゴンッ!!ドンッ、ドンッ、ズルッ……
竿を抜いて、腰を支えながら指を突っ込んで中のを掻き出そうとした時だった。突然、爆音とともにトイレ全体が揺れた。
何かがぶつかったようだが、ゾウでもぶつかったような大きな揺れ。しかもその後に数回ぶつかって、滑り落ちるような音も聞こえた。
俺と香さんは息をひそめ、ジッと耳を澄ませる。香さんにはこの誰かさんが、様子がおかしく爆走してきているのがわかったのか。さすが、1000年。
わずかにうめき声が聞こえる。ぶつかったやつがすぐそこにいるのか。
心臓がバクバクする。何か、得体のしれない何かが近くにいる。恐怖と、香さんを守らなければという使命感に俺は指を抜いて竿をしまうとスラックスのチャックを閉めベルトを手に持つ。
外したベルトは何かあった時の武器になる。別に、外してもスラックスがブカブカで脱げてしまうなんてこともないので。
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