ニャーとワン

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 正直、何でこのタイミングなんだよと思う。けれど香さんの様子をうかがうと、そんなことも言ってられない。  壁に両手を突いたままジッと1点を見つめ、きっとその先に爆音の犯人がいる。俺とのセックスなんて頭からすっぽ抜けて……はないだろうが、頭の片隅に押しやって。  今の香さんの頭の中は爆音の犯人でいっぱい。そんなことにいちいち嫉妬してしまうが。これほどまでに真剣な顔をするのは、そいつが擬人化種である可能性が高い。  ドア越しに外の気配を探り、聞こえるのが男のうめき声だけだとわかると物音を立てないように鍵に手をかける。 「香さんはここにいてください。俺が見てきますから、絶対に動かないで」 「わしも行く。この気配、たぶん奴は……」  便器に座っていたはずの香さんが、振り返ると身支度を整えてシャキッと背を伸ばしていた。その目は真剣。本当に、ヤっている場合じゃなかったな。  鍵を開けると、香さんがドアを開けて先に飛び出した。慌ててその手をつかんで、前に出る。  匂う。血の匂いだ。  香さんが血相を変えて飛び出すということは、やっぱり擬人化種なのか?香さんは1000年も生きているので、擬人化種かどうかは見ればすぐにわかるんだとか。  まだ見てもいないのにわかったのか?擬人化種特有の匂いがするのか、気配で何となくわかるのか。
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