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とにかく、さっきの衝撃と爆音といい血の匂いといい、確実に怪我をしている。が、こんな時間にトイレの壁にぶつかるやつだ。
擬人化種にしろ、ただの人間にしろ、警戒しなければ。急ぎつつ、かつ壁沿いに身を隠して外の様子をうかがう。
うめき声を上げながら身じろいでいる。「早うっ」と、俺を押しのけてまた飛び出しかけた香さんをなだめ、静かに顔を覗かせる。
まずは、奴がいる地面に血溜まり。うずくまっているのか、横を向いている足が見えた。赤いラインの入ったジャージを着ているな。
さらに身を乗り出してみると、顔が見えた。奴には見覚えがあった。
「さっきの、猫カフェにいた男の子ッスね。擬人化種ッスか?」
本庄さんが店長を務める猫カフェで、ロシアンブルーの子猫に夢中だった男の子。頭と腕から血が流れている。そして、ぶつかったらしい壁。
大きなクレーターが、そこにあった。血だらけの、赤いクレーター。
高めの身長にガッチリした体。一体何がどうして、壁に赤いクレーターができるほどの衝撃でぶつかったのか?
「じゃからそうじゃっ!!早う助けに行くぞっ!」
グンッ!と手を引かれた。叫んだ香さんが泣きそうになりながらも俺を睨み付け、男の子の元へと駆け寄る。擬人化種だから、ここまで余裕がなく焦っている。
香さんにとって擬人化種が傷つくのは耐えられないらしい。駆け寄り、傷の具合を見て頬を叩く。
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