ニャーとワン

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 まずは助けなければ。擬人化種だろうが人間だろうが、正体不明の怪しい男の子だが。酷い怪我だ。 「おい、大丈夫ッスか?怯えなくていい。俺達は仲間、お前と同じ擬人化種。ひいてはこの方、この街の市長様ッスよ。擬人化種専用の医者に診せるんで、何があったのか教えてくれませんか?話せますか?」  香さんはこの男の子が擬人化種だと言うが。俺も、そのつもりで自分達が同じだと打ち明け、なおかつ香さんが市長だと言ったが。  これで、もしも彼が人間だったらヤバいな。香さんの監視下に置かなければならなくなる。さてさて、どうなることやら。  目が開いた。ミルクチョコレートのような優しい茶色の、けれど恐怖に怯える瞳。  俺と目が合うと目を見開いて、慌てて起き上がり地面を蹴ってズリズリ下がる。頭が切れ、どこかの骨が折れているであろう酷い怪我なのに、必死に俺達から逃げようとする。 「待て、何も怖くない。わしらはただ、おぬしを助けたいと――」 「あ……なか、ま。………………っ!く、くるなっ……ボク、は、っ……!」 「香さんっ!!」  同じ擬人化種だと信じてもらうために狐の耳と尻尾を出し、香さんは手を伸ばす。が、男の子が地面の土をつかんで投げつけた。  とっさに香さんを抱きしめてかばったが、背後でタッタッタッタッと音が聞こえ振り返ると。そこに、もう男の姿はなかった。
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