48人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
まず、動けたのか。走れたのか。元気じゃないか。それが素直な感想。
そして、結局何の擬人化種なのかがわからなかった。ずっと人間のままだったし、香さんの狐部分を見ても驚くだけで安心したようには見えなかったしな。
俺は香さんと初めて出会って助けられた時、安心した。初めて出会った擬人化種、仲間だったから。
俺だけがおかしい、独りぼっちなんだと、この世界の何もかもが恐ろしかった。それが香さんと出会ってから180度変わった。こんなにも…………擬人化種って多いのかよ。
それなのに、彼は逆に攻撃してきた。そして逃げた。牙を剥いて噛みついてきたリ、鋭い爪を伸ばして引っ掻こうとしたりもせず。
ただ、手元にあった土を投げた。それなら人間と同じだ。そもそも、もしかして擬人化種じゃないのか?けれど、香さんが見間違うとも考えづらい。
「残念じゃが、あれほどに元気ならば今回は見送ろうかのう。しかしあやつ、あれだけの傷を負っていながらかなり足が速かった、のう」
「え、立ち去るのが見えたんスか?って、うわぁっ!?」
腕の中でくぐもった香さんの声が聞こえて、腕を離す。顔を上げてびっくり。香さんが2人いたんだ。
本体は俺がガードして。瞬時に作り出した分身で追いかけようとしたが、そのあまりにも速い俊足に驚いただけで足が動かなかったと。
分身は俺と目が合うとニッと笑って、霞のように風景に滲んで消えた。
最初のコメントを投稿しよう!