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「香さん。車に戻りましょう」
他の人が来ないとも限らないし、空が明るくなるとここはまるで事件現場。人が集まってしまう。
俺は体をひねって向き合い、泣き止めない香さんを抱き上げると車の後部座席へと押し込んだ。そして俺も一緒に入って、ドアを閉める。
頬を濡らす香さんがもう耐えられないと飛びついてきて、受け止めた。両腕で、他人の痛みに苦しみ震え涙を流す恋人を力一杯抱きしめる。
あぁ。あなたはそうやってずっと、何年何十年何百年もの間、他人の痛みも幸せも共有してきたんスね。
俺の痛みも、出会ったあの時に共有して、一緒に泣いてくれた。誰よりも他人を本当の意味で理解できる、理解してしまう力。
聞こえはいいが、本人からすれば苦痛。幸せや、良いことばかりを選んで共有することなんてできやしないのだから。
なら。香さんの痛みも苦しみも、俺に分けてください。2人で分け合えば、少しは痛くなくなりますか?苦しくなくなりますか?
その分、たくさん幸せにします。たくさん愛して、痛みも苦しみも乗り越えていくんです。2人で。
「うっ、うぅ……はぁっ、ふっうぅ…………探すぞ、絶対に。あの子を、助ける……っ」
「はい」
一体、あの子はどんな辛い思いをしてきたのか。彼本人と、同調している香さんにしかわからない。
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