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というか、ということは香さんには彼が何の擬人化種なのかわかったんだな。最近までは普通の動物だった。擬人化したのをきっかけに捨てられたということは、人間に飼われていた?
独りぼっちになって、この街でさまよい続けているのか。金がなければ住む家もない。早く保護して、新しい暮らしを。
そのためにはまず、香さんの同調が終わって落ち着くのを待とう。
暗くてよく見えなかったうえに名前も何もわからないが。香さんが共有した記憶に彼の居場所につながるヒントがあると、信じよう。
もしもそれでわからなかったら、人――擬人化種探しのプロに頼みましょう。彼女なら仕事柄すぐに、見つけてくれますよ。
なんとなく、わかるんスよね。
香さんが声を上げてむせび泣いている理由が、彼の痛みに同調しているせいだけじゃないと。
香さん、あなたは…………擬人化種が人間の手によって虐げられるのがたまらなく怖くて、苦しくて、辛いんでしょう?そしてそれはきっと、あなた自身が過去にそういう経験があるから。
1000年前の香さんの主ではなく、それよりももっと手前、別の人間によってもたらされた辛い経験。
それが何かまではわからないッスけど。なんとなく、そう思う。でなければここまで傷つかない。市長になってまで擬人化種の保護に躍起になったりしない。
ガタガタ震える香さんの体を強く抱きしめ、俺は窓から夜空に浮かぶ月を見上げた。細い三日月。
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