擬人化種の在り方

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「あぁ。さすが、手回しがよいのぅ。なら、今晩は奮発してハンバーグを2つ焼いてやろう。大根おろしで食べる和風ハンバーグゆえ、大根をおろすのは頼むぞ」  思いがけない言葉に、態度に、驚いた。驚きすぎてバッ!と振り向いて、緋桜の顔に柔らかな笑みが浮かんでいるのに胸の奥がトクンッと鳴った。  もう、怒ってはおらぬのか?さっきのは冗談…………ということではないのだろう。じゃが、とりあえず今はもう、愛する彼の笑みを見られたことに安心。  一気に力が抜けて、つい調子に乗ってベラベラと。家に着きバックで車を駐車し終わった緋桜に手を伸ばし、触れようとした。  その手を、捕まれた。グンッ!と一気に引っ張り上げられ、身を乗り出す形で抱きしめられる。  正直、無理な姿勢なのでかなり腰が痛い。上半身が緋桜の腕の中、下半身は助手席。腹のあたりにシフトレバーが当たって、ゴリゴリと結構苦しいのじゃが。  それも全く気にならぬほどに、わしの五感全てが集中し緋桜を感じておる。2本の腕が強く腰を抱き、わしの手を握る手は指を絡めて。  見えなくても、彼が笑っているのを感じる。触れているところから伝わってくる彼の温もりと、彼の匂い。甘い声に、酔いそうじゃ。 「煮込みがいいッス。じっくり煮込んでいる間に、香さんが欲しい」  耳元で、甘く囁かれる。だけでなく、ねだるような言葉を囁かれた耳にチュッとキス。腰を抱く手が背中から腰、尻までをいやらしくツツーっと撫でた。
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