ワインの色味香りを上回るほどの

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 テーブルの上を滑ったグラスに、キュポンッ!とコルクを抜いたワインを注いでいく。実は煮込みハンバーグでも使っていた、赤ワイン。  底のあたりが赤くなったグラスを緋桜の口元に持って行き、押し付ける。ギョッと、逃げようとする緋桜の手首をつかんで、ニヤリ。 「それとも、口移しの方がよいかのぅ?…………フッ。逃げるなよ?んく……」 「かっ、香さん!それだと酔いやすく――っ!」  どうやら自分では飲みたくないようじゃったので。わしはグラスの中の赤を全て口の中に流し入れ、飲み込もうとせずにいくじなしの緋桜の手首をグンッ!と引き寄せた。  慌てて自由な方の手でわしの肩を押すが、もう遅い。唇を重ねる。ニュルッと舌を割り込ませればわずかに開いた隙間から赤を注入。  返却は受け付けぬ、やめろ。唇を重ねたまま顎を持ち上げ、「ゴクンッ」と首の突起が上下に動いたのを確認。  少しだけビクッと跳ねた緋桜は、それでもまだ唇を離さないでいるわしを睨んでおる。なんじゃ、文句を言いたそうじゃな?言わせぬよ。  緋桜の口の中にわずかに残る赤を舐め取るように、舌を絡める。膝の上にまたがって、上から貪るように緋桜を求める。  あぁ、美味いワインじゃな。緋桜も、そう思うじゃろ?  わしの肩を押す手に力がなくなってきたので、「はぁ、はぁ」と呼吸を乱しながらやっと唇を離してやる。緋桜は、頬を赤く染めて呆けておった。
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