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「さてさてどうかのぅ、初めての酒の感想は?」
「…………不味い。最悪、ッス」
えっ?味の感想を聞けば、そんな暗い声が返ってきた。びっくりして、わしを見ようとしない緋桜に思わず手を伸ばす。
愛しい彼の名を呼んで、こっちを向かせたい。きっとさっきの感想は嘘じゃから。わしの目を見れば、嘘なんか吐かずに「美味しい」って言ってくれるじゃろう。
そう、思っていたのに。
「心の準備ができていないとお伝えしたはずですが?俺達の間柄とはいえ無理矢理飲まされるのは、嫌ッス。もう飲まない、香さんとは飲みません」
緋桜は、わしの手を拒絶した。叩いたとか、振り払ったとかではない。触れようとしたわしの手をつかんで、ゆっくりと下ろす。わしの目を、まっすぐ見つめて。
なぜ?どうして?どうして、下ろした手をつかんだまま離さないのじゃ?嫌なら、この手を離せばよいじゃろう?
言い方は柔らかいのに、わしを見つめる赤い隻眼からは何も感じ取れない。からかっておるのか?もしそうなら、怒るぞ。笑いながら怒ってやる。
じゃがもしも。本当に無理矢理口移しでワインを飲まされたのが嫌で、本気で怒っているのなら。
痛い。ズキンッと、心が痛む。少し前まではあんなに情熱的にわしを求め、愛してくれたのに。わしが、緋桜に嫌なことをしてしもうた。嫌なことを言わせてしもうた。悪いのは、わし……?
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