ワインの色味香りを上回るほどの

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 ギューッと力強く抱きしめてくれるが、そうすれば、謝ればこのわしが許してくれると?甘いわ。  わしは「いーやーじゃーっ」と、腕を突っ張って緋桜を拒否。このわしを拒否したのじゃ、わしだって緋桜を拒否してやる。あの時のわしの悲しみ、胸の痛みを思い知れ。  わしは怒っておるのだ!せっかく。せっかくこの時のために、緋桜を驚かせてやろうと秘密裏に変装した分身を使って遠くまで買いに行っていたというのに。  途中、わしの変身した分身だと気付いて声をかけてきたドクトルに危うく捕まりそうになって。  全速力でバイクを飛ばして逃げて。しかもそのあと、この前紹介してやった新入社員の若い女を連れて街を歩いておる高宮君を見かけて慌てて道を変更。  さらに!チラシを広げて何やら騒いでおるシオン君と、その勢いに仰け反りながらも時間を気にしておるネコヤン君に遭遇。  2人はわしに気付くことはなかったのでそのまま通り過ぎたのじゃが。シオン君は「こっちの方が肉が安い!しかも野菜が半額だぜ!?」とチラシを指さし、ネコヤン君は「けど遠いじゃないか。買い物なんか早く済ませてあとでお前と――」と、シオン君の手を握っておった。  完全に嫁、じゃなシオン君は。恋人と甘い時間を過ごしたいのであろうネコヤン君には、チラシのセールの重要さがまるでわかっておらぬ。  シオン君の成人祝いに、免許を取得すれば車を買ってやる約束をしておる。車さえ手に入れれば遠いスーパーもすぐそこじゃ。
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