ワインの色味香りを上回るほどの

10/21
前へ
/395ページ
次へ
 わしをからかったのじゃから、からかい返す。なんて子供じみておるな。フッ。1000年もの時を生きたこのわしが、子供か。  謝ろうとして、ニヤついて口を閉ざしておるわしに気付いた緋桜が。少し顔を赤らめてわしの顎をつかんだ。 「あなたがそういうことをするのなら、俺にだって考えがあるッス。香さんが酒に弱いのはよくわかっているので。さぁ、逃げないでくださいね……?」 「えっ!?ちょっと待て、ひお――んむっ!」  ゾクゾクッ!わしの悪戯に怒った緋桜は黒い笑みを浮かべ、膝の上のわしを落とさぬように手を伸ばす。つかんだのは、ワインボトル。  え、殴られるっ!?いやいや、さすがにそれは有り得ない。片手はわしの顎と口を強くつかんだまま、もう片方の親指でキュポンッとコルクを開ける。  そしてそのままワインボトルに直接口をつけると、チラッとわしを見てから口の端を釣り上げる。一気に、ワインボトルを持ち上げた。  いやいや待て待て待て。ワインをラッパ飲みって。ボトルにあと半分くらい残っていたのに、ゴクッゴクッゴクッと飲んでいく。  どこのやさぐれオヤジか。そんな飲み方で一気に大量に飲めば、しかもこれが初めての酒なのだから悪酔いする。あ、ピタッと止まった。  吐きそうか?ボトルに口をつけたまま一旦停止した緋桜は、寸の間を置いてまたゴクッ。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加