ワインの色味香りを上回るほどの

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 まだ飲むのか!もうあと少ししかない。ボトルの底はほぼ真上を向いて、そして、飲みきった。すごいな。それがまず、素直な感想。  最後の一口を飲み込んではおらぬのか、唇をしっかり閉じた緋桜はわしを見つめる。え?なんか、いやーな予感がするのじゃが。  まさか。本能的に逃げなければともがけば、口を押さえておった大きな手が下に降りて顎を持ち上げ声を出す前にふさがれる。  嫌な予感に「いやだ」と開いた口に緋桜のそれが重ねられ、隙間から温かく芳醇な液体が、まぁ大量に流れ込んできた。そんなに含んでいたのかと驚くくらいの量に、一瞬溺れそうになったわ。  苦しくて緋桜の胸をドンドン叩くも、さらに顎を高く上げられて飲み込まずとも重力に従い喉の奥へと流れていく。  む、むせる。しかし緋桜は口を離してくれぬので咳き込むこともできず、仕方なく、頑張ってゴクンッと飲み込んだ。それを待ってましたとばかりに、ワインの味が染みついた熱い舌がニュルッと侵入。  同じ味のわしの舌を絡め取るが、もう限界。思いっきり、咳き込んだ。 「ゴフッ!ゴホッゴホッゴホッゴホッ!うっ……ゴホッゴホッ、はぁ、ゴホッゴホッゴホッ!はぁ、はぁ…………す、すまぬ。しかし今のは、死ぬかと思うたわ……」 「ちょっと、飲み過ぎたッス。お、同じことをしれ、さし、あげようろ……?」
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