ワインの色味香りを上回るほどの

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 ん?緋桜の声がおかしい、というかろれつが。もしかして、酔うておるのか?いや、あれだけ飲めばそりゃあ酔うだろうのぅ。  ドンッ!と突き飛ばして咳き込んだものだから危うく緋桜の膝から転げ落ちるところじゃった。そこはさすがというか、ガシッ!と腕をつかんでくれて免れたが。  赤っぽい、ドロドロの唾液がわしの口から垂れて緋桜の服を汚してしもうた。袖で拭おうとしたがその手をすくい上げられ、ワインの香りがする緋桜の口元へ。  チュッと手にキスをすると、自分の頬に当てる。目を閉じて少し頬擦りをすれば謝罪の言葉を述べ。ゆっくりと開かれた赤い隻眼は、いつもの鋭さが皆無。  トロン、と酔っ払いの目。そして、顔が真っ赤っか。顔だけでなく首も、見えている素肌はほとんどがさっき豪快に飲み干したワインと同じ色に染まっておる。  緋桜は酔うと真っ赤になるタイプか。目は回っておらぬか?問えば、「へーき」と返される。  全然、「へーき」そうではないが。見ろ。頭の中がフワフワしておるらしくフニャッと微笑んで、わしの体を抱き寄せると首元に頭をグリグリ押し付けてきたぞ。  完全に、甘えておる子供じゃ。未だかつて見たことのない緋桜に、ちょっと恐怖すら感じるほどの変貌ぶり。 「のぅ緋桜。ワインは美味しかったか?また今度、次は白ワインでも飲もうかのぅ?」
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