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「それだけは絶対にできません!擬人化種が受け入れられ、人間と完全に共存できる世界になるまで私は諦めませんから」
「相変わらず夢が大きいスね。そこまで意気込むのであれば早く知事になって、首相になって、いずれは世界を制する王に」
「君こそ夢が大きすぎますよ、それは。しかし、そうなりたいものです。何年かかってでも、いつかは」
ソファーでノートパソコンを叩き続けていた青年が腰を上げ、私の前へ。目の前に書類の束を突き出す。
「俺はいつまでも応援しています。必要とあらばあなたの手となり足となり、この命さえも捧げて。…………なんて、言うと思ったスか?はい。誤字が37か所、直してくださいスね」
データベースへの打ち込みは終わったからと、ソファーに座って手帳を広げる彼は私の秘書。
頭脳明晰で何でもできる優秀な、優秀過ぎてトゲが痛い彼は今日の分の書類を全て片付けてしまったらしい。
このあとの予定はない。明日の予定を確かめているんだろう。分単位で決まっている、わずかにも隙間のない、私に容赦のないスケジュールを作るんだから。
だからいつも、仕事の終わりが近づくと精神的にも体力的にもボロボロに疲れるんだ。年長者をもっと敬ってください。
彼から受け取った、赤い丸がいくつもついた書類に目を通し溜め息を吐く。
何年経ってもこういった、単調な作業は苦手。機械は得意なのでパソコンを打つのは早いし、プレゼンの資料を作るのも得意。
けれどずっと打ちっぱなし、書きっぱなしでは気が滅入る。それ以上に、対談や接待などの長時間人間と関わるのはいつまでたっても慣れない。
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