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打ち解ければ打ち解けるほどに、人間の醜い部分が見えてしまうから。
「ん?そんな目で見られても、俺は一切手伝わないッスから。ちゃんと振り分けているんです、自分の分は自分でこなしてください」
チラッと目を向けると、私の視線に気づいた彼と目が合った。ガーネットのような深い赤い目が細められ、フッと笑う。
立ち上がった彼は「飲み物でも買ってきます」と、静かに部屋を出て行った。あーあ、見捨てられた。
いいですよ。君が戻ってくるまでに終わらせますから。無理だと思うけど。と、やり直しを食らった書類を作り直す。
明日は彼が言っていたように、対談と対談との間にある人と会う約束をしている。
猫屋敷悠一君。私と同じ擬人化種で、ライオンとトラのハーフであるライガー。彼が小さい頃からの仲で、何かあれば手を貸してあげたり貸してもらったり。
つい最近も、どうしても守りたい子ができたから、その子のために動画を編集してほしいだとか。記憶を消して、人間の子供を刑務所に入れてほしいだの。
完全に犯罪。それを市長である私に頼むとか、あの子は私を何だと思っているのか。
それでも私は引き受けて、言われた通りにした。だってあの子、ネコヤン君の目が真剣だったから。あぁ、変わったなぁって思えるくらい逞しく、目覚めた顔をしていたよ。
明日はそのネコヤン君がどうしても守りたい子を紹介したい。少々困ったことになっているから、私に見てほしいというのでお呼ばれしに行く。
19歳の、白猫の擬人化種の青年。ネコヤン君の恋人。つい最近まで人間の、若い女の子が彼女だったはずだけど。
これは運命的な出会いだったかな?ネコヤン君が同性の恋人を作るとか、かなり驚きだけれど。会うのが楽しみだなぁ。
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