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このあたりの地図は全て記憶してあるし、最短で帰宅を目指す彼もまた人間ではない。
この街には擬人化種が多い。私が呼んでいるからね。擬人化種が普通に暮らせる街を目指す。エリアを広げていっていずれはこの世界のどこででも暮らせるようにしたい。それが私の夢。
夢は強くでっかく!そのためにはまず人間達に擬人化種を知ってもらい、受け入れてもらわないと。
だから私は擬人化種の研究もしている。どういうメカニズムで普通の動物が人間化するのか。寿命や体の仕組み、子孫についてなど。
研究を始めて間もない頃、ネコヤン君を被験体にしていた時期があって。急ぎ深くを求め過ぎた私はネコヤン君を傷つけてしまった。
今は被験体の意見を第一に、急ぎつつも細心の注意を払って研究を続けている。確実に前に進んでいるって実感しているよ。
「香さん。本当はさっき寝ていたでしょう?ペンを握り締めてうつらうつらしていたの、見てるんスから」
赤信号に捕まって、彼が呟いた。嘘、気付かなかった。
「目を開けて眠るとか器用ッスね。どんな夢を見ていたんスか?なんか、怖い顔をしていたんスけど……」
「少し、昔のことを思い出していたんですよ。初めて触れ合った人間の。前に話しましたよね?彼が死んだ後、私は屋敷に火を放って人間達を皆殺しにしたの」
「…………香さんって。本当は今も、人間が大嫌いッスよね」
笑みを浮かべる私の顔をチラッと見て、青に変わった信号に目を向けた彼は車を発進。私が怖いですか?
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