始まりの擬人化種の今

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 そう、私は1000年前のあの日、人間を何人も殺した。化け狐となって襲いかかり、鋭い爪で切り裂き、食らいついて肉を引き裂く。男も女も年寄りも子供も関係なく。  私にとって主は初めてできた友。心を許せる、触れ合うことができるかけがえのない友。それを、あの人間どもが奪った。  許せなかった。憎くて憎くて、殺した後に人間達の残骸を喰った。不味かった。醜い人間は想像通りに不味い。 「香さん、抑えて。にじみ出ているッスよ。もうすぐ着くので、なんならもう1つどうぞッス」 「え?んぐっ!?」  昔のことを思い出してイラつき始めていたら。急に口に何かが突っ込まれた。彼が運転しながら、こっちを見ることなくゼリーのパウチを取り出し、私の口へ。  右手でハンドルを握りながら、左手でビニール袋から出して片手でふたを開けるとか。これ、彼の2個目だよね?  私はそんなにヤバかったかな?擬人化種は精神状態に気をつけないといけない。さっきみたいに気分が高まると普段セーブしている気が漏れて周りの擬人化種や動物に影響が出てしまう。  それは1000年も生きている私くらいで。他の擬人化種なら良くも悪くも気分が最高潮に達すると擬人化が解けて本性が出る程度。  この前ネコヤン君が白猫の子とのことでひと騒動を起こしてしまい、1人の人間を犠牲に出した。 「すみません。大丈夫ですか?君は私の気の影響を受けやすいから……」 「問題ありません。よし、着きました。今日も遅くまでお疲れ様でした、香さん」  我が家が見え、彼が危なげのないハンドルさばきで車庫入れ。私はゼリーを半分ほど飲み込むと、パウチの口を彼の口に突っ込んだ。
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