食うし喰われる

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 押し倒された。ボスンッと、ベッドに沈められたのは香さんではなく、俺。  え、なぜですか?普通はこういう時、ネコがタチに身をゆだねてお互いに愛を囁き合いながら準備を整えていくはずでしょう?  ただのセフレや今までの作業ならともかく、恋人同士での行為ならそれなりに甘え甘えられ。  たくさん触れて体を開かせて、甘く甘く愛撫してやりながら焦らす。焦らして焦らして、もう耐えられないと泣いて懇願してきたらジェットコースターが落ちるように一気に突っ込んでやる。  そのはずだったのに。なぜタチである俺が、ネコである香さんに押し倒されてなおかつ乗っかられているのか? 「ふん、マヌケ面じゃな。抱かれてはやるが、誰が主導権をやると言うた?このわしを散々待たせたのじゃ。最初はわしの好きにさせよ」  あぁ、そうか。真藤香という男は、1000年を生きた最初の擬人化種の妖孤のオスは、普通ではない。  だから「絶対に動くな」と俺を見下ろし、嬉しそうにウキウキ。遠足前の子供か。だが何だか面白そうだし、様子を見ていようと俺は両手を頭の上。  バンザイ状態の俺の衣服のボタンを外していき、前を開く。一旦俺の上から降りて下も脱がしながら、自分も同時に服を脱いで…………同時?  あれ、おかしいな。ギュッと目を閉じてから目を開ける。んん?俺の目には、目の前に香さんが2人いるように見えるんだが。  突然のすごい乱視か?しかもそのどちらもが頭の上に狐の耳を、尻からはフサフサの尻尾を生やしていて。
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