呼吸を整えて。

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 その恋に気付いたのはちょうど、中学三年生の頃。 「あんた、一緒の高校じゃなくてよかったの?もしかしたらもう会えないかもよ……?」  そう母親に言われた時に、私はまず彼の居ない生活を考えようとしたんですが無理でした。私の日常の風景の中に、彼はとても自然に溶け込んでいたのですから。  私の頃はまだ携帯電話なんて無くって高校進学後は連絡手段がほとんど無いという状況で、更に彼は野球部。色んな高校からスポーツ推薦で行くことも考えると彼の高校の進学先は全くもって分かりません。  そんな時に恋心に気付いたものですから、その当時は本当に焦りました。  今思えば、家が近いからそれは無いはずなんですけどね。  そして結局、私と彼は同じ高校に進学を決めました。私としては入試の時に見かけていなかったし、更にその高校はあまり野球の強くない高校なので疑問に感じていたのですが、彼はスポーツ推薦で高校に入っていました。  後から母に聞きました。  私の母経由で、幼馴染家の方に情報が渡っていたそうです。  だから高校でただボーっとしながらクラスメイトの自己紹介を聞いてるときに、ふと幼馴染の声が耳に入って叫びそうになりました。必死に食い止めたのですが、その時に私の方を見ていた幼馴染の笑顔を私は今でも覚えています。  そうして、同じ高校に入った私たちはそれでも変わらずに野球と合唱に明け暮れて、帰る時に正門前に集合してから一緒に帰る約束をしていました。  変わった所と言えば、私が待つ側になった事でしょうか。  購買部で買った飲み物を口にしながら、それもまた新鮮だなぁ。と当時に私は考えていましたが、それと同時に恋心は日々大きくなっていくばかり。  野球部に入ってクラスで騒ぐ幼馴染と、合唱部でそんなに騒ぐ性格でもない私。当然話しかけづらくて、相手も分かっているのか話しかけては来なくて。  学校内での接点が帰宅の時しかなくなっていた私にとって、その時間は待ち遠しくなっていきました。  そのはずだったのです。  あの日までは。
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